中小企業のための環境マネジメントシステム(EMS)
2023.5 改訂
ゼロカーボン・SDGs宣言する自治体が増えています。
また、グリーン調達でサプライチェーンにEMSを要請する企業もあります。
時代に対応して、EMSを検討する事業所もあります。
ゼロカーボン・SDGs・循環型社会など持続可能な社会を目指していくためには、環境マネジメントシステム(EMS)の活用が有効で必須です。
中小企業が、EMSを導入し環境経営を運用するには、単にEMSの知名度だけではなく、EMSが中小企業の身の丈に合い、確実な環境経営の実践とEMSを活用して経営体質を向上していけるかの見極めが重要かと思います。
EMSとしてはISO14001が国際規格として広く普及しています。
しかしながらISO14001は環境保全また経営体質の向上という点では非常に有効なツールであるものの、中小企業ではスタッフがいなく、難しいとか導入・維持費用が高いという課題があります。
そこでISO14001の骨格を活用して、中小事業所版のEMSが創設され普及しています。
主なものには以下のようなEMSがあります。
以下の他にも、エコステージや運送業界で広がっているグリーン経営制度がありますが、私達が鹿児島を中心に九州・沖縄地区で普及を図っている4種について述べます。
(1) ISO14001
国際標準化機構ISOで1996年に制定され、その後何回か改訂されています。
国際的な商取引には必要なものです。
国内でのグリーン調達の条件として認証取得を推奨する、また必須とする大手企業もあります。
また、公共工事では入札資格審査で加点して優遇するまた物品購入で優先する自治体も多くあります。実績、知名度では抜群といえます。
認証登録まで、一般的には6-8ヶ月かかります。
認証は3年間有効ですので、3年目には更新審査が必要です。
1年目、2年目にはサーベランス審査があります。
認証登録に要する費用は、企業の規模・環境負荷、依頼するコンサルや審査機関にもよりますが、コンサルが30万円~100万円、登録審査が50万円~100万円、サーベランス審査で登録審査時の2分の1、更新審査で登録審査時の3分の2位かかるとみておいたら良いと思います。
(2) KES
京都議定書発祥の地である京都で2001年に創設されました。
中級編のステップ2(ISO14001の約80%)、入門編のステップ1(ISO14001の約40%)との2種類が あります。
その後、2012年にはISO26000(社会的責任)に対応したKESステップ2SR、ISO50001(エネルギー)に対応したKESステップ2Enを制定して審査しています。
KESのステップアップは必ずしも必要でなく、一般的に小規模事業所はステップ1、中企業ではステップ2で運用しています。
全国企業の90%は小規模事業所です。
小規模事業所がゼロカーボン等を目指すには、KESステップ1は非常に有効なツールだと言えます。
KESはシステムがシンプルであり、構築に必要な環境マネジメントマニュアル・様式などはサンプルを提供しています。
現在、全国17KES協働機関で連携してKES普及を図っています。
認証登録には約6ヶ月かかります。登録は3年間有効です。
認証登録後は1・2年目には確認審査、3年目は更新審査があります。
認証登録に要する費用は、企業規模にもよりますがKESステップ2が登録審査時約20万円、その後は約10万円です。
またKESステップ1は、登録審査時約10万円、その後は約5万円です。
多くの事業所で、短期間で投資資金を回収しています。
KES審査員は、ISO14001審査員登録でKES審査員研修を受けた人です。
KESは、審査員研修に熱心で2ヶ月に1回は、全審査員対象に研修会を開催しています。
10人程度以上の中小企業にとって、システムがシンプルで使いやすく、審査では助言が可能であり、「企業と一緒に考える審査」を推奨しており、経営体質強化など経営成果を得られやすいという特長があります。
大手電気メーカー等がグリーン調達基準を満たすとしており、公共工事や物品購入で優遇している自治体も増えています。
認証によるイメージアップ・信用を得るというよりは、実質本位で環境改善や経営体質を強化したいという中小企業には最適と言えます。
(3) エコアクション21(EA21)
環境省が1996年に創設して2004年に大幅にシステム的に見直し改訂し、2005年春から活発に拡大・普及を図っています。
システムでは、二酸化炭素排出量削減(省エネ)、廃棄物排出量削減(あるいはリサイクル推進)及び総排水量削減(節水)、化学物質使用量削減、環境配慮事業の目標設定と環境経営レポートを公表することが必須です。
また、5つの業種毎ガイドラインに基づいて、システムを構築するようになっています。
認証登録には約6ヶ月かかります。認証は2年間有効ですので2年目には更新審査が必要です。その間の年は、中間審査となります。
EA21審査員はEA21審査員の試験に合格したISO14001審査員や環境カウンセラー等です。
認証登録にコンサルが必要な場合は、約20万円です。
地方自治体で地域の事業所での導入を推奨するところが多く、コンサル費用を無料にして地域の事業者合同で取組む自治体イニシアティブプログラムもあります。
審査費用は、企業規模等によって異なりますが、登録審査・更新審査で約10万円、中間審査で約5万円、2年間の登録料が約5万円です。
KESと同様、審査で助言が可能です。
環境経営レポートは、活動内容のまとめができ、対外的に公表され有効です。
ただ、小規模事業所にとっては、やや書類が多く、重たい傾向があります。
(4) 鹿児島市環境管理事業所(グリーンオフィスかごしま)
鹿児島市内の多くの事業所が環境配慮できるように、鹿児島市が2004年に独自に創設したものです。
システムはKESやエコアクション21(EA21)をさらに簡易化したもので、システム構築を楽にするために文書・記録の様式さらに記入事例をホームページで公表しています。
環境管理指針の要求レベルをミニマムにしており、ISO14001の20%程度と言えます。
登録時と3年目に、ISO14001審査員による1時間の審査があり助言もあります。
なおISO14001,KES,EA21認証取得事業者は、環境管理事業所のレベルを満たすとして初回は自動的に認定されます。
認定のためには約4ヶ月(3ヶ月以上の実践が必須)かかります。
3年間有効ですので、3年目には再申請が必要です。
認定後、毎年の審査はありませんが毎年活動実績を報告が必要です。
継続的改善のためには、専門家派遣、環境教育講座などがあります。
認証取得に要する費用は、独自構築が可能で、登録審査と3年後の審査は無料です。
鹿児島市では認定事業所には認定証を授与し、市のホームページに公表しています。さらに公共工事や物品購入で優遇し、独自の環境補助金もあります。
10人程度以下の小規模事業所には、非常にシンプルで有効です。
ただ、企業規模が大きくなると、EMSの運用で経営体質を向上するには企業規模に見合った上記のEMSの活用が必要に思います。