Think Globally, Act Locally!!
   (地球規模で考え、地域で足元から実践)

2023.12

 環境経営を長年推進していると、何故地球環境問題は起きるのか?地球環境問題は世界的に理解されながら解決に向けた動きが何故遅いのか?環境経営の究極の目的は何なのか?等本質的な疑問を持ちます。

日本の代表的経営者の稲盛和夫氏と当代随一の知識人である哲学者の梅原猛氏が、1990年代半ばから2000年代にかけて、現代文明について対談した内容が「完本・哲学への回帰」で紹介されています。

副題は「人類の新しい文明観を求めて」とあり、現代文明が持つ課題と新しい文明への方向を提案しています。

2人の印象に残る言葉を紹介します。

 (現代文明の5つの課題と新しい文明への方向)
地球環境問題の解決
・人間中心主義の現代文明 ・傲慢になった人類 ・マザコン文明
・「自然は人間の奴隷」という誤解 ・「自然への畏敬の念」を忘れた人類
・進歩史観が人間を欲望の奴隷にした ・進歩思想が増やした恥知らずな人々
・「進歩」という思想から「共生・循環」の思想へ ・経営者にも文明論が必要 

倫理観の高い資本主義の創造
・資本主義勃興の時代には、「厳しい倫理観に裏付けされた資本主義」が存在
・日本にも、「人間を基にする経営の行き方」があった 
・道徳の喪失
・今や「利潤追求だけが自己目的化」して、いろんな問題を引き起こしている 
・「欲望の無限開放」が近代文明の本質 
・「国益を守る」ことが傲慢さを助長 
・「足るを知る」 
・もはや経済成長は不要では 
・自利と利他は共存すべき 

働く意義の再構築
・働く目的:心を磨き人間性を高めること 
・「利他の精神」が求められている 

一神教的世界観から多神教的世界観への転換 
・自分の神だけが正しいという宗教の限界 
・「殺すなかれ」を人類の道徳に
・霊魂は、この世とあの世を無限に行ったり来たりする 
・死者の霊を信じる心

日本人の道徳心の復興
・地に落ちた日本の道徳
・「衣食足りて礼節を失う」
・道徳的感性のない知識人 
・人として最低限必要なルールを子どもが知らない。必要な知識は法律より道徳
・非常に偏った知識偏重の教育 
・知育と徳育のバランス 
・心の教育が重要

2人の対談から、「環境経営の究極の目的」は「道徳心の復興」・「利他の心の醸成」等従業員の人格が向上し、事業所だけでなく家庭・地域でそのような考え方・行動の輪が広がることかと思わされます。