中小企業での環境経営・環境改善の現場
中小企業での環境経営の基盤づくりとしてKES,エコアクション21(EA21),鹿児島市環境管理事業所、ISO14001のシステム導入コンサルまた審査を行ってきました。それらの中で、中小事業所版として鹿児島で早くから導入されているKESステップ1の取組み状況についてご紹介します。
●KESステップ1導入の動機と活動の成果
環境マネジメントシステムを導入される事業所では、取引先の要請や公共工事などで優位になる、イメージアップになるという理由が多いと思います。
KESはまだ知名度が低いためか、鹿児島でのKES推進事業所の多くの導入理由は身の丈にあうシステムを導入し、環境に配慮した事業を展開したい、社内活性化に活用したいと言うものです。そのためか環境改善に熱心に取組まれるところが多く、短期間で多くの成果を出しています。
システム導入前には、省エネや裏紙の活用などをこれまでも実施しており、環境負荷の削減・コストダウンは余り期待できないと話されるのですが、半年間トップのリーダーシップの元システムに則って、全員で環境改善に取組むと予想外の大きな効果が得られています。
上記事例は建設業のもので、事務所の電気と社用車のガソリンが主な環境負荷です。設備の多い製造業での事例は鹿児島では少ないですが、エアコンや照明での節電だけではなく、設備の電気やエアーの管理・改善を推進して成果を出しています。
皆の環境意識が高まると、いろんなアイデアが出るとともに、確実に実践が進み、予想以上の改善ができるものです。
●システムの理解と構築
KESステップ1の導入には、まずシステムの理解から入りますが、KESステップ1のシステムは簡単なので、全体像を含め理解が容易です。
またシステムの構築も、環境マニュアルはわずか8ページ、必要な記録様式も少なく、それぞれにモデル事例や記載事例があるため、業務の合間にシステム構築ができます。一般的には2-3ヶ月でシステム構築しています。
●法律と要求事項
ほとんどの事業所で悩まれるのが、環境関連の法律・条令や要求事項です。
小規模事業所では廃棄物処理法と家電・自動車・改正リサイクル法程度しか関連していない場合が多いのですが、関係しそうな法律・条令を調べ、何が要求されているのか?要求されていることが実践されているのか?と見直すことにより、環境関連法の理解が深まり、順守が確実になっています。(特に産業廃棄物管理の徹底)
大気・水質など公害に関する規制は厳しいこともあり守られていますが、消防法、毒物及び劇物取締法での危険物に関する管理が不十分というところがよく見られます。
●全員参画と周知
3ヶ月の実践では、環境改善計画書に基づく改善活動が重点ですが、KESステップ1では、文書・記録が少なく全員での改善活動に集中して取組めています。
全員参画で成果を上げるために以下のような工夫がされています。
①計画段階から従業員も参画する。
得てして、マネジメントシステム導入では、事務局だけが頑張り、認証取得後、皆の協力が得られにくいという課題が生じがちです。
そのため計画段階から、多くの人が参加し一人一役で取組むことによって、皆の意識が高まりアイデアがいろいろ出され、成果が上がりやすい
改善活動になっています。
②環境宣言だけでなく環境改善計画書を見やすく掲示する。
改善計画がどのように進捗しているのか、グラフでカラフルに大きく掲示することによって皆の関心が高まっています。
●毎月の勉強会やミーティングの実施
掲示だけではなく定期的に進捗状況や環境情報をミーティングなどで紹介することによりコミュニケーションが密になります。
また毎月の環境勉強会を継続されているところでは、着実に改善の力がついています。
●トップの関わり
トップの思いの強さ、活動への関わり度合いによって、活動の成果が大きく左右されます。トップが環境宣言し、年一回は最高責任者による評価を実践することはシステムで要求されていますが、KESでは環境改善計画の進捗について3ヶ月に一回は、トップが進捗状況を確認するように推奨しています。
トップが熱心なところでは、毎月環境会議などに出席しています。
●システムのステップアップ
KESは、一気にISO14001にチャレンジせずに、力に応じて順次ステップを踏んでレベルアップすることを目指すようにできています。
そのような考え方が理解され、KESステップ1からKESステップ2、 KESステップ2からISO14001とステップアップするところも出ています。
●活動2-3年後の悩みと環境経営のステップアップ
電気・ガソリン・紙・廃棄物の削減などのムダ取りだけでは、システムを導入して2-3年も経つと活動が頭打ちとなり、社員のモラールを維持するのが難しくなります。
そのようになる前に、これまでの削減目標は現状維持として据え置き、新たな目標を取り上げることが必要です。
例えばグリーン購入の促進、環境配慮商品やサービスの開発・提案増・販売増など、プラスの環境負荷の新規目標設定です。
県内では以下のような改善目標で取組まれています。
●設備設計事務所:グリーン化技術のスペックインと提案・採用数増
●管工事業や電気工事業:省エネ製品の販売増
●測量事務所:グリーン化提案・採用件数増
●浄化槽メンテナンス業:契約件数増 など
早い段階で本業、日常業務の中から改善目標を設定することが重要です。
なお環境ビジネスへの進出を考えられているところでは、中期計画で人材育成、開発・販売基盤の整備・推進計画を策定し、目標管理したらと思います。
●トップから見たKES
環境に関するコストとしては、電気使用費用、ガソリン等燃料費用、廃棄物処理費用等がありますが、小規模事業所でも10%削減すると年間30万円程度のコストダウンになります。KESステップ1にかかるコンサル・審査費用は少額なので、1年以内で十分投資費用は回収できます。
しかしながらトップが最も喜ばれるのは、マネジメントシステムを従業員が体得でき、社内が活性化できたことです。
小規模事業所では一般的に業務管理面での課題を持っています。PDCAサイクルを回す、内部でのコミュニケーションを密にする、定期的に勉強会を実施する、一致団結した取組みなど、これまでやりたくてもできなかったことが、円滑にできるようになったと話されています。
●環境活動報告書の発行と活用
環境マネジメントシステムを導入し、社内で環境改善を推進するだけではなく、活動内容を整理し、取引先、地方自治体、近くの住民さらに従業員の家族などに紹介することも重要なことです。(KESでは環境活動報告書のモデル事例を提案しています)
企業の信用を高めるだけではなく、環境に取り組む仲間を増やすことにつながり、地域の環境保全が促進されます。
九州で初めてKESの認証取得した鹿児島市の西栄設備事務所では、環境活動報告書を発行し、環境に取組む仲間づくりに活用しています。
●KESの推進と地球温暖化防止・環境まちづくり
KESの普及を図って、3年間でCO2が約300トン削減(県外での支援企業分含む)できています。(家庭60軒からのCO2排出量相当)
一般市民向けの啓発活動では、継続的に確実にCO2を削減できにくい悩みがありましたが、企業の場合は環境負荷も大きくトップの方針、システムに基づく活動が進みやすく、継続的に確実に成果が上がります。
また従業員の環境意識が高まり、家庭や地域で環境に取組む仲間が確実に増えています。
このように環境に配慮する事業所が拡大することによって、地域での環境負荷が低減し、環境意識が高く・改善力のある人材が増えていきます。
地方自治体が、環境配慮のまちづくりを進めるには、環境配慮事業所の拡大を、重点施策に取り上げ、推進することが有効ではないでしょうか?